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  ネット通 販の価格表示ミス
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2004/11/28

ここではネット通販における価格表示ミスのトラブルを検討してみます。
ネット通販の事業者が誤って商品の価格を桁違いに安く表示してしまい、それを知った消費者が注文に殺到するという見苦しい事件が多発しています。この原因を作ったのは有名な丸紅ダイレクトの事件だと思いますが、あの時は丸紅ダイレクト側が「法律的にはその価格で商品を引き渡す義務はないが、道義的責任として特別にその価格で販売することとした」という無謀な決断を下したため、それ以降、価格表示ミスの商品を専門に狙う悪質な消費者が急増しました。中には販売店が謝罪をして注文の取消しをお願いしているにも関わらず一方的に代金を振り込み、販売店が現金書留で返金しても受取り拒否するなどの強引な人もいます。某大手掲示板サイトではこうした価格表示ミスのサイトの情報交換を扱う専門スレッドもあったとか。

価格表示ミスはスーパーの折り込みチラシでも昔からあったものですが、販売店が実際にその価格で販売することはごく希だったと思われます。では何故、ネット通販の世界では大きな問題になっているのでしょうか?それは店頭販売とネット通 販とでは契約成立に至るプロセスに違いがあるからです。


●売買契約のプロセス比較

店頭販売における売買プロセスを見てみると、チラシで価格表示をすることは「広告」として捉えられており、消費者が「これ下さい」と購入の意思表示をすることが「申込み」であり、その申し込みを販売店が承諾した時点が売買契約の成立時期となります。

従ってチラシに価格表示ミスがあった場合、仮にそれを見つけた消費者が注文に殺到したとしても、それだけでは契約は成立しておらず、販売店はその価格で売る義務はなかったのです。

しかしネット通販においては、商品説明や取引方法に関しての説明がすべてウェブサイト上でなされており、ショッピングカート等の注文フォームを通じて注文を受けて、販売店は自動返信メール等により承諾通知を送るという方式がとられています。

これを法律に当てはめて考えると、消費者が注文フォームから送信することが「申込み」の意思表示で、それを受けたプログラムが自動的に受注確認メールを送信することが「承諾」の意思表示として扱われることがあり、承諾通知メールが届くと同時に原則的に契約が成立してしまうことがあるのです。従って自動返信メールの内容が「ご注文有り難うございました。このメールをもって注文を承りました」というように事実上「承諾の通知」と解される場合には、 オートリプライした場合でも契約成立となります。 契約プロセスをそのように設定してしまうと仮に商品価格を誤って表示してしまった場合でもその価格で引き渡す義務が発生しますので販売店は注意が必要です。

  • 販売店からの自動返信メールの内容が「承諾の通 知」であった場合には契約成立
  • 販売店からの自動返信メールの内容が「単なる注文内容の確認」であった場合には契約は未成立

この場合、たとえ商品の価格表示について間違いがあったとしても、商品価格というのは売買契約という法律行為において極めて重要な要素であり、それを間違えたことは事業者側の重大な過失として扱われ、民法95条の但書きにより事業者自ら錯誤による無効を主張することは原則として認められません。

民法95条「錯誤」
意思表示は法律行為の要素に錯誤がある場合は無効とする。
但し表意者に重大な過失があるときは表意者自らその無効を主張することを得ず。

つまりこの95条の但書きがあるがゆえに、販売店は非常に不利な状況に追いやられるのです。


●悪意の注文者にどのように対抗するか

しかし冒頭で述べたように、最近では始めから価格表示ミスであることを認識していながら注文をする消費者が急増しており、事業者がミスに気づくまでのわずかな時間でさえも大量の注文が寄せられるという現象が見られていることから、従来の考え方では事業者が多大な損害を被る危険性が生じてきました。

そこで最近では、契約成立の原則論を尊重しつつも、悪質な消費者から事業者を保護するという観点から、仮に自動返信メールの内容が「承諾の通知」であった場合でも、客観的に見て消費者が価格表示ミスを知っていて注文していたと判断される場合には、事業者自ら契約の錯誤無効を主張することを認容しても良いのではないかと考えられるようになりました。何故ならば、民法95条の但書きは、善意無過失の相手方を保護するために設けられ特例と考えられ、善意でない悪意ある消費者(法律的な意味での悪意とは、事情を知っているということ)を保護する理由はないわけで、よって95条の本旨に基づき、販売店の瑕疵ある意思表示はこれを無効とすることが妥当と解釈することが可能だからです。

もっともこれはあくまで法律の解釈によって妥当な結論を導き出したに過ぎず、過去にこのようなケースでの裁判例もないわけですから、絶対に事業者の錯誤無効が認められると保証するものではありません。最終的には裁判所の判断によることになるでしょう。

消費者が価格表示ミスを知っていたかどうかを判断する基準は、およそ次のような項目です。

  • 出品商品の市場価格が安定しているのに、個数限定など特段の理由なく破格値で出品されている場合
  • 価格ミスで出品されているという情報が他のサイトやML等ですでに流通している場合
  • 当該商品に限ってのみ複数注文するなど転売目的の購入であることが伺われる場合
  • 当該出品商品の前後に同種の商品が掲載されており、その価格と比しても価格誤表示が容易に識別可能であった場合

これらを総合的に考慮した上で判断されます。

 

参考情報

やさしいEC法律入門(電子商取引推進協議会)
http://www.ecom.jp/kaniya/index.html


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