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  電子商取引における売買契約の成立時期
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2004/11/28

この章では電子商取引における売買契約の成立時期を説明したいと思いますが、その前にそもそも売買契約とはどのような条件で成立しその効力を生じるのかを民法の原則論からお話しすることし、その後で電子商取引の場面 ではどういう点で民法の原則と異なる扱いがなされているのかをご紹介したいと思います。


(1)契約の成立から効力の発生まで

(契約の成立要件)
民法において契約は、「申込みの意思表示」と「承諾の意思表示」の合致があれば成立するとされています。これを契約の成立要件といいます。(契約書の作成は原則として契約の成立要件ではありません)。この成立要件をもう少し詳しく言うと、誰と契約するかという主観的合致と、どういう内容の契約するかという客観的合致の2つが内心においてなされれば契約が成立することとなります。ただしこの2点が内心で一致していれば外形にズレがあっても(言い間違えても)契約は成立しますし、内心の一致がなくてもお互いが表示した部分について外形的にこの2点が一致していれば契約は成立します。

たとえば100円の消しゴムが欲しかった(消費者の意志)のに間違えて200円の消しゴムを注文(消費者の表示)した場合でも、店がこのお客さんが200円の消しゴムを売ろうと思い(店員の意志)そのことについて承諾(店員の表示)したような場合、これは内心においては両当事者間にズレがありますが、表示においては一致があるため外形的には契約成立となります。但しこのような場合は下記の表で説明するように、消費者の表示に対応する意志が欠けていますので、消費者は錯誤を理由に無効を主張する事が可能です。

(契約の有効要件)
しかし成立要件さえ満たしていれば契約が全て有効となってしまうと困ったことになります。例えば適切な判断能力を有しない子供が行った契約も有効としてしまうと場合によっては不利な契約を結ばされてしまうこともあるでしょう。そこで民法では、成立要件に次いで有効要件というものを定め、この有効要件を欠いた契約は無効または取り消しうる契約として、その効力に例外を設けています。無効というのは始めから契約の効力を生じないものとして扱うことで、代表的な理由に「心裡留保」(民法93条)、
「虚偽表示」(民法94条)、「錯誤」(民法95条)があります。取り消しとは一旦契約を成立させた後にこれを消滅させる余地を認めることで、代表的な理由に「詐欺・強迫」(民法96条)があります。※刑法上は強迫ではなく脅迫と書きます。

またこの他、当事者の行為能力や権利能力が欠けていた場合や、そもそも契約内容が実現不可能なものであったり違法な内容であったりした場合などにも有効要件を欠くものとして無効や取り消しうることとなる場合があります。

1.当事者に関わる一般 的有効要件
左の要件欠如の場合
 (1)権利能力・意志能力
 (2)行為能力(未成年者、成年被後見人、被補佐人、被補助人)
 (3)意思表示の瑕疵(詐欺・強迫)
 (4) 欠缺(錯誤・心理留保・虚偽表示)
無効
取り消しうる
取り消しうる
無効
2.契約内容についての一般的有効要件 左の要件欠如の場合
 (1)確定性
 (2)実現可能性
 (3)適法性(強行規定・任意規定)
 (4)社会的妥当性 (公序良俗・善良の風俗)
すべて無効

従って以上のような成立要件、有効要件が共に満たされた場合にはじめてその契約の効力は発生するわけです。


(2)隔地者間における売買契約の成立時期

ここまでの説明で、契約は「申込みの意思表示」と「承諾の意思表示」の合致があれば成立することはお分かりになったと思います。しかし双方が遠隔地にいる場合にはどうなるのでしょうか。そこで次は、隔地者間においてはどの時点で契約が成立するのかをご説明します。

隔地者に対する意思表示につき民法の原則では、隔地者間における意思表示はその通知が相手方に到達した時点で効力を生じる(民法97条1項)としており到達主義を採用しています。ただし隔地者間における契約の成立時期に限っては、承諾の通知を発信した時に成立する(民法526条1項)としています。これを発信主義と言います。つまり申込みの意思表示は相手方へ到達することが必要ですが、それに対する承諾の意思表示は発信しただけで有効と扱われるわけです。なぜ承諾通知だけが相手方への到達を必要とせず発信で良しとしたのかというと、郵便による商取引において少しでも迅速な契約の成立を考慮したためと言われています。

(電子消費者契約及び電子承諾通 知に関する民法の特例第4条)
いっぽう同じ隔地者間の契約であっても、承諾が電子メールや画面上への表示といった電子的な方法でなされるものについては、瞬時にその承諾が相手方に到達するという特徴があるため、上記のような時間的なロスを考慮した発信主義を適用する必要がなくなりました。従って承諾が電子的な方法でなされる契約については意思表示の一般原則である到達主義(民法97条1項)に戻り、承諾の通知が相手方に到達した時点で成立するとしました。これを到達主義への返還と言います。

ここでいう到達とは、承諾通知の電子メールが受信者が指定した又は通常使用するメールサーバーのメールボックスに読み取り可能な状態で記録された時点または、画面上に承諾内容が表示された時点とされています。


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