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  オークションIDの窃用
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●真実の行方

インターネットの普及に伴い電子商取引が活発に行なわれるようになってきました。オンラインショッピングやプロバイダへのオンラインサインアップ、ネットバンキングやオークションなど、実に様々な業態がそこに存在します。自宅にいながら買い物が出来たりお金の振込みが出来たりするのはとても便利で有難いことなのですが、いざトラブルが発生したときにはこれほど真相の究明が難しいものはありません。それは何故か?一つは書面での契約でないから。そしてもう一つは本人認証の仕組みが完全でないからです。今回はその典型例といえるトラブル事例を二つ紹介しながら、現行法ではどのような基準で客観的に判断されるのか、そしてまた消費者として電子商取引を行なう際にはどういう点に注意すべきかを知っていただこうと思います。


●オークションIDの窃用にかかる法的責任

(相談事例)

オークションにおいて私のオークションIDが盗用され、なりすまし出品をされました。その結果、何も知らない落札者が代金を騙し取られるという被害にあいました。メールアドレスも変更されていたため私には落札者から何も連絡が入らず、取引終了後に評価欄を見て初めてIDの盗用が判明しました。どのようにパスワードが知られたのかは不明です。出品と落札にかかわる手数料をオークションサイトに徴収されたという点では私も被害届けを出すつもりにしています。このようなID詐称でのなりすまし出品で落札者が取引して代金を払った場合、IDを詐称された側の責任はどのようなことになるのでしょうか?

警察庁生活安全局によりますと、オークションIDの窃用事件のほどんどのケースでは被害者のパスワードが容易に類推可能であったそうです。具体的にはIDが「kenshu1234」だった場合に、その数字の部分がそのままパスワードだったというようなケースです。こういう場合にはパスワード管理上の不備があったと判断される可能性が高く、オークションサイトとの関係では窃用によって生じた出品・落札手数料などはほぼ間違いなくIDを窃用された本人が負担することになります。

しかし今回の相談者が気にしていることは手数料の負担についてではなく、落札者との関係において何らかの法的責任等が生じるのか?という部分だと思われます。これについては落札者とIDを窃用された人(仮にAさんとします)との間で契約が成立していたかどうかに関係してくるかと思います。この点を、現在経済産業省で改定中の「電子商取引に関する準則」(*1)に基づいて考えてみますと、次のような見解となります。

まず、特定のIDやパスワードを使用することで本人確認を行なうこととする等、本人確認の方法についてAさんと落札者との間であらかじめ合意があった場合には、その合意された方法を利用した場合には、仮に無権限者による行為であったとしても本人に効果 が帰属するものと解釈されています。これを表見代理の規定を類推適用して導き出される解釈です。表見代理の規定は、なりすましの場合に直接適用されるものではありませんが、判例では代理人が直接本人の名で権限外の行為を行い、その相手方がその行為を本人自身の行為と信じた場合にについて基本代理権を認定した上で表見代理の規定の類推適用を認めています。

一方、本人確認の方式について事前合意がなかった場合には、「外観の存在」「善意無過失」「本人の帰責事由」という3つの要件を満たしていない限り単なる無権代理人の行為ですので、Aさん本人に責任が及ぶことはありません。もう少し具体的に説明しますと、犯人がAさんのIDを使用して出品していることが「外観の存在」であり、落札者が出品者を過失なくAさん自信と信じたことが「善意無過失」であり、Aさんが犯人に自分のIDを使うことを許可していた場合等が「本人に帰責事由がある」ということになります。今回の場合は、Aさんは犯人に自分のIDを使うことを許可していませんから、明らかに3つ目の要件が満たされていないのでAさんに効果 が及ぶことはありません。

もしも契約が成立しているならばAさんとしては約束の商品を送って契約を履行するか、代金を返金して契約を取り消すしかありませんが、オークションのような1回限りの取引においては、通 常は本人確認の方法についてあらかじめ取り決めがあることは考えられませんので、そうであれば落札者に対して本人が何らかの法的責任を負うということはありません。

以上のように、非対面で行なわれる電子商取引においては、本人を保護すべき事情と相手方を保護すべき事情の一切を相同的に判断するための規範が必要であり、そのひとつが今回ご紹介した電子商取引等に関する準則です。

 

(*1)「電子商取引に関する準則」
電子商取引等に関する様々な法的問題点について、民法をはじめとする関係法規がどのように適用されるのか、その解釈を示すもの。


また今回のケースでは、犯人はパスワードの不正使用、つまり「不正アクセス禁止法違反」を行なっていますが、知っておいて欲しいのは、Aさんは直接的には不正アクセスの被害者ではないということです。不正アクセス禁止法ではパスワードでアクセス制御されたコンピューターの管理者が保護対象となっていますので、この場合の被害者はオークションサイトになるのです。従って被害者でないAさんは「告訴」が出来る立場ではありませんから、「告発」をして不正アクセスの事実を警察に知らせる必要があります。

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