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ADSLや光ファイバーの普及に伴い、一般家庭におけるインターネットの高速常時接続環境が整備されつつあります。それに伴って、従来のテキストや静止画像中心のコンテンツから、動画や音声といった大容量
データの配信が活発になり、まさに第二次コンテンツ革命の様相を呈してきました。そんな中、今ひそかに熱いブームを巻き起こしているのがオンラインゲームです。私自身はまだ一度も経験はなく、今のところやってみたいと思うゲームもないのですが、中高生のあいだではこれが大変な人気のようで、実はこれに関係した摩訶不思議なトラブル相談が近年急激に増えてきているのです。
●オンラインゲームとは
オンラインゲームと言うのは、簡単に言うとネットワーク型RPG(ロールプレイングゲーム)とでもいいましょうか、インターネットに繋がったユーザー同士がゲームと言う仮想空間の中で冒険や戦闘を繰り返しながら、自らが操るキャラクターのレベルをひたすらに高めていくと言うものです。代表的なゲームとしては、ウルティマオンラインやファイナルファンタジー、ラグナロクオンラインと言ったものが挙げられます。
こうしたゲームで発生するトラブルで最も多いのは、「アイテムを騙し取られた」「お金を払ったのにアイテムを送ってこなかった」といった、ゲームで使用するアイテムのやり取りに関するものです。当初この手の相談を目にしたときには、「所詮はお遊びの世界じゃないか」というのが率直な感想でした。が、最近はそうも言ってられない状況になりつつあるのです。現に私は先日、オンラインゲーム会社とユーザーとの調停委員を務めることになりました。こうしたトラブルも現実の消費者トラブルの範疇として公的機関が受理するようになってきたことを意味するのです。と同時に、ゲーム内でのアイテムやキャラクターが法律上どのように扱われるのかにつても大変興味深い問題をはらんでいます。
そこで今回は、トラブルの種類ごとに法的な立場関係を分析してみることにします。
●ケーススタディー
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(ケース1)
A君は「自分の持っているアイテムを5千円で売ります」と呼びかけました。
それに対してB君が「5千円で買います」と名乗りをあげました。
ところがB君がお金を振り込んでもA君はアイテムを譲ってくれませんでした。
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これをA君とB君の間だけの問題として考えれば、A君による詐欺(刑事)か債務不履行(民事)になります。B君はA君の言葉を信じて財物(現金)の交付を行なったわけですから、もしA君が最初からB君を騙すつもりだった場合には詐欺になり、何らかの事情によりアイテムを譲れなくなってしまった場合には債務不履行となるわけです。
ところが事はそう単純ではありません。何故なら、ゲーム内で取得したアイテムを現金で売買することはRMT(リアルマネートレード)として、大半のゲームサイトでは禁止している行為なのです。よって両者とも、このRMTの事実が発覚すればアカウントの永久停止処分を受けることは必至でしょう。
では次のケースはどうでしょうか?
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(ケース2)
A君は「自分の持っている家を5千円で売ります」と呼びかけました。
それに対してB君が「5千円で買います」と名乗りをあげました。
ところがA君が家を譲ったのにB君はお金を振り込んでくれませんでした。
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これもRMTである点ではケース1と同じですが、大きな違いは、騙し取られたものが「現金」ではなく「アイテム」と言う点です。結論から申し上げますと、特定のゲームの中だけで通用するアイテムは、法律上の財物とは認められないので「1項詐欺」にはなりませんが、「2項詐欺」に該当する可能性はあります。「2項詐欺」では、自ら「財産上の不当な利益」を得るか、第三者にこれを得させることで成立しますので、アイテム が財産上の利益と言えれば詐欺罪の2項に該当する可能性はあります。アイテムが経済的な価値をもって一般的に取引されている実態があれば「財産上の利益」と言えそうです。
A君としては、せっかく苦労して手に入れたアイテムを騙し取られたのに泣き寝入りするほかないというのは納得いかないでしょう。しかしよく考えてみましょう。A君はゲームの中だけにおいて自己のキャラクターの使用権を持っているに過ぎず、キャラクターやアイテムの所有権までが譲渡されているわけではないのです。それどころかA君はRMTを禁止する利用規約に違反している立場となりますので、訴訟によってB君に代金の支払いや債務の履行を求めることは出来ないのです。これを不法原因給付と言います。
続いて、RMTとはちょっと性質の異なるケースについてご紹介します。
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(ケース3)
A君は、キャラクターが一定のレベルまで成長する作業を代行してくれる「育成代行サービス」なるものがあることを知り、B君に1万円の手数料と、自分のキャラクターのIDパスワードを渡して育成代行を依頼しました。ところがB君は育成代行をしなかったばかりか、A君の所有するアイテムや貨幣を自分のキャラクターに移行してしまいました。
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このケースではアイテムの売買は行なっておりませんので、一見するとA君には何の非もないように思えます。従って1万円を騙し取られた部分については詐欺として刑事告訴するか、民事上の契約不履行として契約の履行または1万円の返還訴訟を行なうことが可能と思われます。
しかし問題は、アイテムや貨幣を盗まれた点にあります。A君としては自分のアイテムや貨幣が盗まれたのですから、当然自分が被害者であると思うでしょうが、そもそも、それらの所有権は誰にあるのでしょうか?
A君はゲーム会社との契約に基づきIDとパスワードを発行され、それを用いることによってゲームの遊戯権を得ているだけですので、アイテムやキャラクターの所有権はゲーム会社に帰属すると考えられます。そもそもアイテムは財物ではないので、窃盗罪には当たりません。
となれば残るは、不正アクセス禁止法でしょうか。他人のパスワードを利用してアイテムを許可なく移動させたわけですから、B君が不正アクセスを行なったと考えることは可能でしょう。しかし今回のケースでは、A君が自らの意志によってパスワードをB君に教えており、これはゲームの利用規約に反すると共に、これにより生じた損害にはA君の重大な過失責任を問われる可能性があります。
また、規約によって他人にアカウントを貸すことを禁止しているのであれば、A君はゲームサイトに対して債務不履行 責任が生じる可能性があります。不法行為では、損害の発生以外の他の要件(行為の存在、故意・過失、違法性、因果関係)の立証が必要ですが、規約に基づく債務不履行責任であれ
ば、他人への貸与・譲渡はできないということが明記されているだけで主張可能となります。
このように、オンラインゲームにおけるアイテムやキャラクターの取り扱いに関しては、ゲーム会社の著作権や、ゲーム会社とユーザーとの利用契約、そして利用者同士の個別契約などが複雑に絡み合ってきて、なかなか難しい問題であることがお分かりいただけたでしょう。しかし、今後はこうしたネット社会での財産や権利についてきちっと法律上の基準を定めておかないと、電子マネーやオンライントレード(株取引)のトラブルについて対処できないことが予想されますので、とても重要な問題だと思います。
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