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これらはほんの一部ですが、このような脅迫メールがひっきりなしに届く最中も、相談者からは平行して何通
もの相談のメールが来ています。「なんだかややこしいことになったなー」と思いつつも、このまま黙っていては威信に関わると判断して、脅迫メールの送信者を突き止めることにしました。
こうした場合、まずは動機の面から犯人像を推理します。今回の場合、容疑者は次の2名となります。ひとつは「販売会社の社員」。2つめは「相談者本人」です。会社が自らのメールアドレスで堂々と脅迫を行なうことはあり得ないと判断して当初から除外していましたが、念のため販売会社の広報部へ事実確認を行なってみると、会社のメールサーバーからはこの期間中にメールを送った記録はないとのこと。まあ、そうでしょうね。それどころか、この会社自身が半年も前から同様の脅迫メールを大量
に受け取っていることが判明しました。
こうなると犯人は相談者にほぼ間違いなさそうです。しかしそれを決定付けるためには、相談者と脅迫メールの発信元が同じであることを証明しなければなりません。ところが、相談メールは携帯電話で、脅迫メールは海外の匿名メールサーバーから送信されており、即座に同一人物であることの確認が得られません。ここを確認するためには海外のメールサーバーの管理者からサーバーのアクセス記録を開示してもらう必要があるのです。幸いなことに当時、私は警視庁管内の警察署より講演の依頼を受けていたので、この点で警察の協力を得られることになりました。もちろん刑事事件捜査と言う形で。ただしハイテク課と言えども実際には捜査方法も英語も全然分からないとのことだったので、私が作成した英文の照会状を警察署からファックス送信してもらっただけですが。
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(脅迫メールのヘッダ情報↓)
Received: from MTA
by Matrix id TAA13650
for help@web110.com; Thu, 19 Sep 2002 19:49:33 +0900
Received: by sxu1005.smtp-gw.to (8.8.8/8.8.8) id GAA11755;
Thu, 19 Sep 2002 06:48:43 -0400 (EDT)
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(海外への照会文↓)
To Whom May Concern:
From: The Tokyo Metropolitan Police Department, Japan
This is a message from the Tokyo Metropolitan
Police Dept. ABC Police Station, Community Safety Section,
inquiring for your cooperation with the investigation
involving an intimidation case via email.
From Sat. 14 Sep. 2002 to Thu. 19 Sep. 2002, six threatening
emails were sent to the victim using the mail server
under your company's management.
It has already confirmed that the email address at the
"From" section is forged and that the original
holder of the forged email address did not send those
six email .
Therefore, to find out from which network the sender
made an access to the mail server, we like to make an
inquiry to the mail server administrator about the communication
log during that time. So we like to ask you to inform
us of the mail server administrator's contact address
in question (sxu1005.smtp-gw.to)
以下省略
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さて、海外からの返事が来るのを待つ間、ちょっとした牽制目的をこめて相談内容の自宅に電話をかけてみることにしました。もちろん相談者は名前以外は明かしていませんでしたが、大まかな居住地と苗字がわかっていたので104ですぐにそれらしき電話番号が判明しました。ためしに電話をすると父親が出まして、相談者が実在する息子であることが確認できました。ただし、父親の話しでは息子が宝石を買ったことも聞いてないし、事故をしたこともないし、まして鑑定に出すように薦めたこともないとのこと。これにより、少なくとも自殺未遂や鑑定結果
の話しはデタラメであることが判明しました。ついでに脅迫メールのこともそれとなく話しておきました。するとその日の夜、きっと自宅を知られたことの焦りからか、相談者から「もう解決しました。いままで相談に乗ってくれて有難うございました。もういいです。」という簡単なメールが届きました。でも今更遅いですよね。そんなことで許すほど甘くはありません。
海外のメールサーバーからの回答はすぐにありました。さすが警察の威力。送られてきたアクセスログの解析を行なったところ、発信元は相談者と同じ携帯電話のIPアドレスでした。予想通
りです。引き続き、電話会社に当該IPアドレスの契約者情報を照会したところ、みごとに相談者の名前が挙がってきました。ビンゴです。これらの証拠をもとに警察署から相談者へ電話をしてもらいましたところ、あっさりと観念して以下のような謝罪文を送ってくることとなりました。
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| ↑犯人からの謝罪文。恐怖なんて感じてないっての。 |
私としても、別に犯人に刑事罰を課すつもりも損害賠償を請求するつもりもなかったので、これで許してあげましたが、なんともやるせない事件でしたね。後にこの販売会社の評判も調べてみましたが、結構強引な契約を行なっているらしく、全国の消費者センターにも年間1千件の苦情が寄せられていることが分かりました。
しかし今回の場合、販売会社に送られてきたすべての脅迫メールも見た限りでは、どうもこの相談者は、契約うんぬ
んという問題よりも、契約をしたとたんに行方をくらました女性に対しての個人的感情で暴走したように思えます。
悪質な販売業者を擁護するつもりは毛頭ありませんが、だまされた己の愚かさを棚に上げて、ボランティアで相談をしている私たちを巻き込むなんて言語道断。皆さんはくれぐれもそのような事のないように、出会い系サイトに過度の期待を抱かないように心してくださいね。
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